平成23年度は、主にPtナノ厚コーティングを施した試料へのアルミナスケール早期形成におよぼす熱処理の影響について検討するとともに、前年度より引き続き、低Al合金上へのアルミナスケールの生成を可能とするPt以外の合金元素の調査を行った。 Ptナノコーティング試料上へのアルミナスケールの生成は、熱処理時間を長くするほど低下し、コーティングの効果が低減する事がわかった。最適の熱処理条件は、真空中で1000℃まで加熱後直ちに冷却した試料で得られ、これは、合金中からのAlのアップヒル拡散による合金表面へのAlの濃化が最大となる時間帯にほぼ該当した。長時間の熱処理では、コーティングしたPtが基材内部へと拡散侵入してしまうため、PtによるAlのアップヒル拡散に及ぼす効果が低下するためであることが分かった。また、Alのアップヒル拡散フラックスの、定性的な評価を行い、PtのコーティングによりAl外方拡散フラックスが増加している事を確認した。 一方、本研究の目的とは直接は異なるが、種々の金属元素のコーティング試料上にアルミナスケールが生成した場合、長時間でのスケールの成長挙動が異なることが分かった。また、TEM等を用いた詳細な観察により、アルミナスケールを構成する結晶粒径が、コーティングした元素によって異なることが明らかとなった。これのアルミナスケールの組織の違いが、主に粒界拡散にて成長するアルミナスケールの成長動力学に影響を与えたことが分かった。
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