研究概要 |
金属ガラスの優れた機械的強度と,耐食性や電磁特性などの材料機能,過冷却液体域での粘性流動とアモルファス構造に起因する等方均質性は,マイクロマシン(MEMS)創製用金属材料として最も期待されるところである.本研究では,MEMS要素を成形加工により作製する際の,成形限界を明らかにすると共に,成形加工中に現れる結晶化挙動を明らかにし,MEMS要素部材としての金属ガラスの材料特性の変化と信頼性について検討する事を目的としている.平成21年度においてはヱリンバー特性を示すZr基金属ガラス合金の開発を行うと共に,Pt基合金のナノ成形特性を明らかにした.また,示差走査熱量計(DSC)を用いて,準平衡加熱下のガラス遷移温度(Tg),結晶化温度(Tx),並びに恒温変態曲線(TTT曲線)を求めた.また,負荷応力下でのTTT曲線を求めるために,赤外線幅射加熱による急速加熱・恒温保持サイクルを試験片に与え,温度,抵抗値を測定出来る装置の試作を行い,実験計測を行った.その結果,箔試験片の熱容量が小さいために,加熱温度の制御が難しく,不安定になることがわかった.そこで,マイクロヒーターによる加熱,さらに高温熱風発生装置を用いた加熱方法を試行した.その結果,2重ガラス円筒内に高温不活性Arガスを導く方法を採用することとした.一方,加熱雰囲気の影響から,Zr基金属ガラスでは酸化の影響が著しく,結晶化への影響が無視できないことがわかった.そこで,耐酸化性に優れるPt基金属ガラスに加えて,Ni基金属ガラスを作製して実験に供することとし,DSCにより準平衡加熱下のTg,Txを求め,次年度以降の供試材とすることとした.
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