研究概要 |
マイクロマシン用材料としては,これまで主にシリコンが使われてきたが,金属材料の使用により,機械的強度に加えて,材料機能を利用した高機能・高性能マイクロマシン(MEMS)が実現できる.金属ガラスは,その構造がアモルファスであることからナノメートルオーダーでの等方均質性を有し,また,過冷却液体状態下で超塑性(粘性)を発現することから,低応力下でのナノ成形加工が可能であるところに特徴があり,そのMEMSへの応用が期待される.そこで本研究では,種々のMEMSデバイスへの適用を想定し,弾性係数が小さな合金,耐食性に優れる合金,弾性係数の温度依存性がゼロ(ヱリンバー特性)である合金の材料データベースを作製すると共に,合金創製を行った.とくに力学センサや振動ジャイロ用MEMS材料として有用なヱリンバー合金として,Zr-Cu-Ni-Al金属ガラスの合金開発とその特性を明らかにし,ヤング率の温度係数として0.1~-7.9x10exp-5/Kを得た.金属ガラスのMEMSデバイスへの応用には,微小形状への加工特性と加工後の特性,とくに過冷却液体下での超塑性変形中での結晶化挙動について検討する必要がある.そこで本研究では,それぞれガラス遷移温度(Tg)の異なるPt基,Pd基,Au基金属ガラスを用い,示差走査熱量計(DSC)により結晶化過程を明らかにしTTT曲線を求めた.一方,応力負荷下の結晶化過程については,直接通電加熱方式により箔試験片に急速加熱温度サイクルを与え,また,通電電極をカンチレバー構造とすることにより,負荷応力を試験片に与えた.通電電流から電気抵抗値変化を求め,熱分析曲線と併せてその結晶化挙動を明らかにした.これらの知見に基づき,金属ガラスを用いてナノインプリントを行い,ピッチ34nmのSi製ナノドット金型から金属ガラス製ナノ金型の量産加工実験を行い,その有用性を明らかにした.
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