電磁力や爆薬の爆発を駆動力として、金属同士を超高速で傾斜衝突させることにより、強固な接合材を得ることができることが知られているが、その接合原理は衝突界面に発生するメタルジェットが板表面を清浄化するためであると理解されている。本研究の目的は、金属板同士が高速で傾斜衝突する際に発生するメタルジェットの性質を調査し、異種金属が超高速で傾斜衝突する際、両金属のジェットが発生するのか、あるいは片方の金属ジェットのみが優先的に発生するのか等、接合界面における異種金属の相互作用を明らかにして、異種金属衝撃圧着機構を解明することである。研究代表者は、これまで電磁力衝撃圧着時に発生するメタルジェットを高速度ビデオカメラによって捕らえること、さらに発生したメタルジェットの採取に成功している。本年度は、これらの成果を踏まえて、衝撃解析シミュレーションによりメタルジェット放出について検討を進めた。さらに接合実験によって実際にメタルジェットを捕獲・採取した。まず粒子法を用いて衝撃解析シミュレーションを行い、種々の金属が互いに超高速傾斜衝突する際のメタルジェット放出挙動を数値解析により再現し、金属の物性とメタルジェットの成分の関係について調べた。その結果、衝突する金属の密度差によって発生するメタルジェットの成分は異なり、両者の密度が同じ、あるいは差が小さい場合は両金属成分が放出されるが、密度差が大きい場合には低密度の金属成分のみが放出されることを明らかにした。次に電磁力衝撃圧着法ならびに爆着法により種々の金属の組み合わせで接合実験を行い、接合界面形態の観察を行うとともにメタルジェットを採取し、その成分をX線を用いて解析した。その結果、AlとCuの接合において発生するメタルジェットの成分はほぼAlのみであった。このようにシミュレーションと実験の両面から、超高速傾斜衝突時のメタルジェット放出挙動を明らかにすることができた。
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