研究概要 |
1.差動排気型同時成膜装置の導入と調整 左右のチャンバー間でガスの流入は完全に零ではないが,一槽式の場合の1/9程度に抑制できることが判明した。OESによる槽間の相互汚染を調べたところ,右チャンバーに酸素を一定量流しても,左チャンバーにおけるA1スパッタのプラズマ中に,酸素はほとんど検出されなかったことから,実質的に相互汚染がかなり抑制されていると考えられる。 II.ナノコンポジット膜の作製 (1)CrAlN/BN系膜:比較のために,CrAlN/BN系ナノコンポジット膜については,昨年度に引き続き一槽式成膜装置を用いて作製したBNを18vol%含むCrAlN/BN膜の大気中加熱による自己硬化性の原因を調査した。この膜は約40GPaの高硬度を有するが,大気中800℃で加熱すると硬度が30%以上向上し,50GPaを超える超高硬度を示すことがわかっており,分析機器での解析の結果,A1の酸化物が膜表面付近に分散しており,これが超高硬度の発現に寄与しているとの結論に至った。この結果を次年度の研究に繋げる予定。 (2)AlN/AlOx系膜:反応スパッタ法によるAlNとアルミナターゲットのrfスパッタによるAlOx膜とを本装置を用いて複合化したところ,硬度としては36GPa程度であるが,優れた耐熱性を有することが分かってきた。 (3)CeO_2系薄膜:従来法で作製した膜ではセリアとY,Gd,Sm等とのナノコンポジット化により,光学的特性においては紫外線吸収領域におけるピーク位置や強度にも変化が現れた。差動排気型成膜システムを利用したCeO_2系の成膜では,テスト,条件設定の段階であり,想定している構造の膜は出来ていないが,本システムにより,より緻密なセリア系薄膜をハイブリッド化して作製することで,固体電解質と電極間における中間層しての役割だけでなく電解質そのものとしても有効であることが分かってきた。
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