研究概要 |
現在のパワーデバイスの素材であるSiをSiCに置き換えることができれば,インバータ損失の半減が可能で,日本国内の電気使用の削減効果は原発4基分に相当すると試算されている.このSiCの普及の妨げとなっていた,高価な単結晶ウェハー製造プロセスを打破する画期的な手法が関西学院大・金子らによって数年前に提案された. 研究代表者である西谷は,この原理の解明を求められ,安定-準安定平衡状態図(ダブルダイアグラム)から解釈できることを示した.この新規な結晶成長の機構を解明するため,本年度は以下の2点について研究を行った. 【実験状態図の見直し】実験的に求めることがきわめて困難であることが初年度の実験によって判明していたが,これは他の研究者や研究手法でも同様であるかを確かめるため,主に過去の論文の精査をおこなった.その結果,Si-C状態図では,多形の変態の有無が確認できていないことが判明した.これは,エネルギー差が微少であることと,できた多形に変態を起こさせるのがきわめて困難なためと考えられる.これらの結果をまとめた論文はInTech社より出版された"Silicon Carbide, Materials, Processing and Applications in Electronic Devices"に掲載されている. 【SiC多形間の微小なエネルギー差の高精度計算】実験的に困難な多形間のエネルギー差を理論的に求めるためおこなってきた,振動自由エネルギーと取り込んだ有限温度の自由エネルギー計算の精度を見直した,使用している第一原理計算ソフトVASPが提供する擬ポテンシャルPAWの特質から,平面波カットオフエネルギーが400eV程度でないと信頼できる結果が得られないことが指摘された.また,体積に対するフィッティングがこれまでの計算では不十分であることが判明した.この結果は国際会議で発表するとともに,専門誌へ英文で投稿する予定である.
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