研究概要 |
本研究では、米糠油の精製工程で副生し廃棄物となる残渣油から、健康機能物質トコトリエノールの回収と環境調和型バイオディーゼル燃料(BDF)の生産を行う新規な反応・分離プロセスを構築することを目的とする。本年度は、まず、トコトリエノールと競争的に樹脂に吸着する残渣油の主成分遊離脂肪酸を除去するため、陽イオン交換樹脂によるエステル化実験を行った。そして、エステル化速度に及ぼす水の影響や反応物モル比の影響を検討したところ、副生物である水が存在しても反応が100%進行すること、過剰量のアルコールを添加しなくても反応が100%進行することが分かった。これらは従来とは異なる新たな知見であり、エステル化反応によって、脂肪酸エステルを効率的にBDFに変換できると考えられる。また、モデルビタミンEを用いて陰イオン交換樹脂(OH型)による吸着・脱離挙動の検討を行った。吸着実験は低温10℃で、脱離実験は高温50℃で行い、溶液中のビタミンE類濃度の経時変化を測定した。そして、樹脂へのビタミンEの吸着が非常に速やかであり、10分程度でほぼ全てビタミンEが吸着すること、樹脂に吸着したビタミンEを脱離させるには酢酸エタノール溶液が有効であること、回収率を最大とする酢酸濃度が存在すること、が分かった。このモデルビタミンEを用いた実験で得られた知見に基づき、米糠残渣油からのビタミンE類の回収実験を行ったところ、トコトリエノールおよびトコフェロールのα,β,γ体の平均回収率が約82%となり、従来法の37%よりも著しく増大した。これより、分子蒸留を伴わない本回収法の有効性を示すことができた。
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