研究概要 |
抽出試薬担持ポリマーブラシ搭載多孔性シートの作製方法を確立し,ポリマーブラシへの担持メカニズムを解明した。さらに,23年度はポリマーブラシの形成比率を解明する手法を見出した。ポリエチレン製多孔性シート(細孔の平均直径1μm,細孔の体積比率75%,膜厚3mm)を基材に用いた"抽出試薬担持ポリマーブラシ搭載多孔性シート"の作製経路は4段階からなる。まず,電子線照射によってラジカルを基材につくった。つぎに,エポキシ基をもつモノマー(ここでは,グリシジルメタクリレート)をグラフト(接ぎ木)重合させた。さらに,付与したポリマープラシ中に疎水性基としてアルキルアミノ基(構造式で示すと,C_nH_<2n+1>NH-)を導入した。最後に,抽出試薬として例えば,リン酸系抽出試薬の代表であるビス(2-エチルヘキシル)リン酸(略称HDEHP)を,ポリマーブラシ中のアルキルアミノ基と抽出試薬中の疎水性部との相互作用に基づいて担持した。得られたシートをディスク状に切り出して,市販の固相抽出用空カートリッジに充填し,抽出試薬担持カートリッジを作製できた。疎水性基としてのアルキルアミノ基の炭素数を2から18まで変化させて,抽出試薬をポリマーブラシに担持した。同時に,抽出試薬の担持に伴う多孔性シートの細孔構造の変化を,電子顕微鏡および比表面積測定によって追跡した。疎水性基の種類,抽出試薬の種類,そしてそれらの組み合わせを変えることによって,炭素数と抽出試薬担持量との関係を調べ,疎水性基をもつポリマーブラシへの抽出試薬の担持構造を解明した。希土類金属や貴金属の分離精製に役立つ高性能分離材料であり,実用化を進めている。
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