研究概要 |
本年度は1-メチルナフタレンの水素添加反応のための水素ディストリビューター型膜反応器の開発を行った.触媒として白金を採用し,含浸法により担持した水素ディストリビュート用のアルミナ膜を作製し,反応温度250℃,水素圧0.8MPa,液相圧0.6MPaの反応条件において膜反応器の運転を行い,ガスクロマトグラフィーを用いて反応物や生成物の定量分析を行った.反応はフィード溶液を流通循環する方式で行った.その結果,1-メチルナフタレン濃度が10mol%となるようにデカリンを溶媒として混合した溶液をフィードとしたとき,接触時間2分で転化率が10%を達成した.従来のこのような水素添加反応は液相に水素を溶解させる必要があったため,2MPaあるいはそれ以上の反応圧力下で反応を進行させる必要があったが,この圧力を低下させても水素ディストリビューター型膜反応器を用いることで水素添加反応が実現できることが示された.しかし,デカリン溶媒を用いず1-メチルナフタレン100mol%をフィードとしたときは接触時間が15分でも反応は認められなかった.以上のように,水素添加反応が進行することが確認されたが,反応速度が予想よりも小さく,改良の余地があることが分かった.とくに1-メチルナフタレン濃度依存性の検討結果より,1-メチルナフタレンが膜面の触媒に強く吸着し,反応を阻害している可能性が示唆されたのは重要な知見である.また今後は1-メチルナフタレンから1-メチルデカリンへの選択率と,1-メチルナフタレンの転化率の関係などを系統的に明らかにする必要がある.
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