研究概要 |
昨年度,1-メチルナフタレンの水素添加反応のための水素ディストリビューター型膜反応器を開発し,反応試験を行ったが,水素添加反応の反応速度が予想よりもかなり小さいことが課題として残ったため,今年度はまず膜に担持される白金触媒の活性を評価することから検討を始めた.既に水素添加反応挙動が明らかとなっているトルエンの水素添加反応を行ったところ,非常に高い転化率および選択率でメチルシクロヘキサンを得ることができた.よって,膜に担持された白金触媒の活性については問題がないと判断した.また1-メチルナフタレンの水素添加反応により1-メチルデカリンを得る反応経路について詳細に把握するため,バッチ式反応器を同時に開発し,反応物を評価したところ,中間体として1-メチルテトラリンおよび5-メチルテトラリンを経て1-メチルデカリンが得られることが明らかになった.ただし,1-メチルナフタレンからメチルデカリンへの反応と,メチルデカリンから1-メチルデカリンへの反応のどちらが律速となるかについては決定できなかった.これらの成果を踏まえて,昨年度開発した1-メチルナフタレンの水素添加反応のための水素ディストリビューター型膜反応器を用いて,様々な反応条件のもとで運転を行い,膜反応器の成果を評価したが,昨年度を超える反応成績を得ることはできなかった.担持触媒の水素添加反応活性を有することは確認できていることから,気(水素)-液(1-メチルナフタレン)-固(白金触媒)の三相界面の形成が,1-メチルナフタレンの水素添加反応の進行に適していないことが原因と考えられた.三相界面のナノ構造の精密制御技術の確立が今後の課題となった.
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