研究課題
結晶多形現象は特に医薬品の品質保証にとって重要であり、所望の多形の生産および多形間の転移の制御が不可欠である。多形現象は、本来は平衡関係に基づくものであるが、多形間の転移速度は複雑であって、速度論による解析が必要であり、平衡論と速度論を正しく理解する必要がある。特に固体状の医薬品の製造においては機械的なエネルギーの付与過程が避けられないことから、多形転移の可能性がある。機械的エネルギーによる化学変化、すなわちメカノケミカル効果、に関しては種々の固相反応現象が報告されており、最近では多形転移の報告例も多い。本研究の初年度では、医薬品として用いられる有機化合物を対象として、所定の比率の多形混合物の生産制御方法の研究(平衡論と速度論)、および類似化合物の存在がメカノケミカル効果による多形転移に与える現象(主に速度論)に関して、実験を行いそれぞれの現象解析を行った。その成果を5報の原著論文としてまとめた。用いた物質のうちでスレオニンに関しては、雰囲気中の水分によって多形の転移が進行すること、およびメカノケミカル効果によって転移が進行するが、僅かな量類似化合物の存在によって転移が抑制される場合のあることを明らかにした。類似化合物は合成過程で生成し、不純物として作用する可能性が高いことから、この知見は重要であるといえる。また、メカノケミカル効果によって結晶構造が破壊されやすい化合物の存在が転移速度に影響を与えるも見出され、XRD/DSC装置を用いて機構に関する解析を継続している。
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