研究概要 |
本研究では,近年特に材料合成やナノ構造形成の学理-やや理学的な観点-から注目を集めつつある「第3世代」の柔軟な多孔性配位錯体について,その吸着誘起構造転移の機序を解明・モデル化することで,多孔性錯体を構成する原子構造と吸着分子の物性から吸着/構造転移挙動を定量的に予測できる工学的手法の構築を目指している。H22年度では,錯体構成原子をあらわには扱わずにそれらをLennard-Jones粒子の連続体として表現した「原子厚さレイヤー」から構成した単純系(スタックレイヤー(SL)型)について,分子シミュレーション/自由エネルギー解析を通じてその構造転移機序を明らかとし,それをモデル化することに成功した。この成果は,H21年度に検討を進めた単純系(相互貫入ジャングルジム(JG)型)に対する成果と共にいくつかの国内および国際学会において発表し,大きな注目を集めている。また,H21年度に開発を完了した温度可変ガス吸着量測定装置を用いて櫛状のモチーフが相互に組み上がった「インターデジテート(ID)型」錯体に対するアルゴン吸着等温線を測定し,特異な吸着ゲート効果が発現することを明らかにした。尚,この吸着ゲート効果が吸着誘起構造転移に起因するものであることをin situ粉末X線回折測定(SPring8, BLO2B2)によって明らかにすることに成功した。さらに,ID型錯体の単結晶構造を元にAtomistic系(理想実験系)モデルを構築し,本モデルに対する分子シミュレーションを実施することで,その吸着誘起構造転移機序の一端を明らかにすることに成功した。
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