研究概要 |
各種多孔性配位錯体-「相互貫入ジャングルジム(JG)型」錯体,2次元的な格子が積み重なった「スタックレイヤー(SL)型」錯体,および,櫛状のモチーフが相互に組み上がった「インターデジテート(ID)型」錯体-を対象とし,以下の要領で研究を実施した。 1.単純系での解析及び「最小限物理モデル」の構築(ステップ1):各種多孔性配位錯体-JG型,SL型,ID型錯体-を対象とし,その構成原子をあらわには扱わずにLennard-Jones粒子の連続体として表現した単純系モデルによる「最小限物理モデル」の構築を行なった。 2.Atomistic系での解析及び構造転移モデルの構築(ステップ2):単純系と同様に分子シミュレーションに基づく自由エネルギー解析を行い,その転移機序の解明に成功した。Atomistic理想実験系の構築では,実在系の結晶構造を参考とし,分子力学法および密度汎関数理論法を用いた。また,構造転移モデルの構築では,転移前後の二種の骨格配置について系の化学ポテンシャルに対する二つの自由エネルギー変化を計算し,それらの交点を定式化する手法を採用した。 3.実在系実験データ取得(ステップ3):京都大学・北川進教授よりID系サンプルの提供を受け,クライオスタット組込吸着装置による吸着等温線測定を行った。これまでに,特異な吸着ヒステリシスを有するID型錯体を見出すことに成功し,SPring8でのX線回折測定によって吸着誘起構造転移が生じていることを確認することができた。また,ステップ2におけるAtomistic理想実験系の構造転移モデルを本実在系に適用し,実在系における吸着誘起構造転移挙動を良好に再現することができた。すなわち,本研究により得られた「構造転移モデル」は十分な汎用性を有しており,多孔性配位錯体の応用のための工学的モデル化に適用可能であることを明らかにすることができた。
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