本研究では、内部にナノスケールの微細空隙を有した純度の高い膜状物質を気相プロセスで作成するために、非平衡RFプラズマCVD法を用いた分散性の高いナノ粒子の生成と、ナノ粒子を輸送し基板表面に連続的に堆積させて膜を形成させる手法を組み合わせた技術を開発して、その有用性を明らかにしつつ、膜の構造に応じた適切な生成条件を提示することを目的として研究を行った。本年度の研究成果の概要は、以下のとおりである。 1. RFプラズマを用いた粒子発生ユニットを検討した。このユニットは、円筒形の接地電極の中心軸に沿って棒状のRF電極が貫通した構造を有し、両電極間の環状部に形成された非平衡プラズマ場に原料ガスとキャリアガスを流通させることで、ナノ粒子を気相で連続的に発生させられるように設計した。これを、ガス供給系、高周波電源、整合器などと組み合わせることで、ナノ粒子発生装置を製作した。 2. 金属アルコキシド蒸気を原料として、堆積用モデル粒子の発生を行い、流通ガス流量・圧力、原料濃度、プラズマ電力などの操作条件を変化させて、装置の粒子発生特性を予備的に把握した。 3. ナノ粒子を堆積させるための堆積用チャンバを、ナノ粒子の輸送速度や基板への到達頻度を変化させるべく、ガス流速・圧力や、電場、温度場を調整できるように設計して製作した。 4. 粒子発生装置とチャンバを接続し、チャンバ内に設置したシリコンウェハ小片を基板としてナノ粒子を堆積させ、堆積層の表面、断面を電子顕微鏡で観察する予備的実験を行った。発生装置およびチャンバの操作条件や、チャンバの構造に変更、改良を重ねることで、膜状の堆積物が形成されていく過程を検討できる条件を見いだした。さらに、フーリエ変換赤外分光装置により、粒子および膜の組成を評価できることも確認した。以上の成果により、次年度以降の堆積実験を行う準備が整った。
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