研究概要 |
本研究の目的は,ゼオライトナノクリスタルを基材としたゼオライト膜構造体触媒の開発である.同触媒膜により,反応律速下で固体酸性と分子篩能を有すると共に,ゼオライト膜厚で逐次反応を制御する特性を併せ持つ『構造体触媒』を実現する.本年度は以下の課題を検討した. 1)基材となるナノ結晶ゼオライトの調製 新たに10員環ゼオライト(TON),12員環ゼオライト(FAU, MTW)の合成とサイズ制御に成功した. 2)拡散抵抗が無視小となるゼオライト結晶サイズの決定 MFIゼオライトについて,炭化水素の吸着機構と拡散係数測定を行った.拡散係数に関しては,炭化水素<アルコール<芳香族となり,炭化水素とアルコールの吸着量と拡散係数は非常に大きいことが示された.ナノサイズMFIゼオライトを用い,芳香族のアルキル化を実施した.その結果,100nm以下のナノ結晶では,反応律速下でのアルキル化が可能であるが,平衡組成に達してしまうことが明らかとなった.そこで,100nnm~200nmの結晶サイズのMFI型ゼオライトの結晶外表面酸点を不活性化(フェニルシラン化合物を使用)し,芳香族のアルキル化反応に使用した.その結果,良好なパラキシレン選択制を示した.結晶サイズが1000nm以上のゼオライトは,活性の減少と反応中の活性低下が著しいことが明らかとなった. 3)ナノサイズゼオライトを積層させた触媒膜(構造体触媒)の開発 ナノ結晶のMFI, MORゼオライトをアルミナフィルターの外表面に積層したナノクリスタル積層触媒膜を作製に成功した.両ゼオライトで作成した膜は良好な分離能を示すことを明らかにした.ナノゼオライト積層膜では,原料との接触性が向上し物質移動抵抗が無視小であるため,アセトンからの低級オレフィン合成実験において固定層型反応器の約1/10程度の触媒量でも同等の活性を示すことが明らかとなった.
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