初年度に行ったペリレンのナノ結晶化の初期過程のストップトフロー分光測定に関する結果から、ナノ結晶化の時間の制御が短くできれば、サイズ制御が可能であることが分かった。そこで、1.場に造核剤を混合させた再沈法や2.再沈処理後に系を過激な条件におくことで、積極的に結晶化を促進するという結晶核の出現を誘発させた再沈法を検討した。2の方法に関しては、液体窒素等を用いた極低温下への再沈殿の実験を行った。本実験は、分光の同時解析が困難であり、明確な効果も得られなかった。その一方、1の方法においては、ペリレンの類似化合物であるペリレンビスイミドをペリレン溶液の中に混入させて、再沈操作を行うという実験を行った。実験において、ナノ結晶化の初期過程の分光測定を行い、結晶核の急速な出現を促す効果が出るかどうかがポイントであったが、解析の結果、ペリレンビスイミドのペリレンに対する量比が増大すればするほど、ナノ結晶化の生成時間は短くなり、サイズが微小化する傾向が認められた。これは、まさに構想通りの結果であり、本申請研究の構想自体が正しいことが証明できたともいえる。 上記のような手法や解析の知見を活かして、極微小サイズに制御された顔料ナノ結晶の作製を行った。従来、30nm以下の顔料ナノ結晶を作製することは簡単ではなかったが、本研究では、30nm以下の顔料ナノ結晶を大量生産できるという見通しを得ることができた。さらに、得られた顔料のコントラスト比は、現行品等と比べて、数倍向上することが分かり、今後カラーフィルターの高品質化を達成できる可能性を示した。
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