研究課題
マイクロ波は狭いエネルギー分布を持つ電磁波であり、照射される物質のマイクロ波領域での吸収能の違いによって物質を選択的に加熱することができる。中でも固体と液体からなる不均一系では高いマイクロ波吸収性の固体がマイクロ波照射で選択的に加熱され、その表面は周囲の溶媒温度よりも高温になると考えられる。この高温な表面は反応場として機能することが期待できる。そこで本研究では、固体の選択加熱によって形成する高温の表面を利用して特異なナノ構造や反応促進を得ることを目的とした。本年度の研究として、電場・磁場分離したマイクロ波照射下における鉄粉末を用いた(2-ハロエチル)ベンゼンの脱ハロゲン化反応を検討した。反応はシングルモードマイクロ波照射装置を用いて電場、磁場照射でそれぞれ検討し、マイクロ波効果の比較としてマントルヒーター加熱も検討した。反応時間45分における転化率を比較したところ、反応基質によらずもマイクロ波加熱がマントルヒーター加熱より転化率が高かった。さらにマイクロ波加熱で比較すると磁場照射における転化率は電場照射よりも高かった。最も転化率の高かった(2-ヨードエチル)ベンゼンについて、アレニウスプロットによる速度論解析を行った結果、加熱方法によらず活性化エネルギーが同じであり、電場磁場ともに反応機構に変化ないことが推測される。以上の結果から、本反応における反応促進は磁場照射において鉄粉末のみが選択加熱され、高温の反応場を生成したためと考えられる。
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