研究概要 |
カーボンナノチューブなどのナノカーボンと呼ばれる炭素系ナノ材料の内、単層カーボンナノホーンはその特異な構造から、水素吸蔵材料や触媒担体なのどの様々な応用に期待が寄せられていた。申請者らは、2001年にNatureに発表した水中アーク法[Sano et al, Nature 414,506-507(2001)]を発展させて独自のカーボンナノホーン合成法を発明・開発し、科学研究助成金(若手A、平成17-19年)による研究活動等により、低コストでカーボンナノホーンの大量合成を行うことが可能となった。カーボンナノホーンはガス燃料吸蔵剤としてはメタンを良く吸蔵するが、水素の吸蔵剤として優秀であるという報告はなった。本研究では、カーボンナノチューブやナノホーンに水素吸蔵合金を複合させれば特異な水素吸蔵特性を示すと期待して実験的検討を行なった。本研究では、コストは高いが安全に室温で実験できるPd-Ni合金を水素吸蔵合金として使用した。ガス導入アーク放電法により合成したPd-Ni合金内包単層カーボンナノホーン(SWCNH)による高圧水素吸蔵実験を磁気浮遊天秤を使用して行なった。Pd-Ni合金内包SWCNHはPd-Ni合金のみの場合やSWCNHのみの場合よりも多くの水素を吸蔵できることがわかった。この理由として、スピルオーバー効果と呼ばれるPd-Ni表面における水素の触媒効果による解離により生じる水素原子の炭素中の拡散によって、SWCNH内部のPd-Ni合金に水素が到達・吸蔵が起こることによると考えられる。水素の吸蔵量が多い理由は、その効果で生成した水素原子の一部がSWCNHの炭素部分に残留していると考えられる。Pd-Ni合金内包SWCNHを350℃で酸素中加熱処理をし、SWCNHの炭素部分に細孔を開けた。その結果、水素吸蔵速度は顕著に増加した。
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