研究課題
太陽光による水素燃料生成と微弱光による有機物分解を目標として、可視光で動作する光触媒材料の探索がすすめられている。これまでに多数の候補物質が見いだされ、可視光励起による物質変換効率は10年前には考えられなかったほど高い水準に達した。当該分野の研究開発において現在日本は世界をリードする立場にある。これからも世界をリードし続けるために、新世代触媒の開発を支える知的基盤を構築することが本研究の目標である。3年間の研究計画として、電子状態遷移に共鳴させることでラマン散乱強度が著しく増大する現象を利用して、光触媒中に混在する可視光吸収サイト・電子トラップサイト・正孔トラップサイト・助触媒のラマンスペクトルを分離して観測する。初年次である平成21年度は、現有するラマン分光器を光触媒解析用に改造を進めた。あわせて、遷移金属や典型元素をドープした酸化チタン光触媒の組成分析に、蛍光エックス線分光が有用であることを確認した。さらに、共ドープによって電子-再結合反応の速度を低下させることができるクロムとアンチモンをドープした酸化チタン光触媒の再結合反応速度を、時間分解赤外吸収を用いて計測した。0.01%から10%まで4桁にわたってドープ量を変化させたところ、再結合反応速度が01%ドープ体で最も低下することを見いだした。次年度には、波長442nm(He-Cdレーザー)と785nm(半導体レーザー)を励起源として、これらの共ドープ光触媒のラマン散乱を計測する。共鳴している電子励起状態と基底状態とのあいだの電子振動遷移に活性な振動モードによるラマン散乱が共鳴による強度増大をうける原則にもとづいてスペクトルを解析する。研究代表者は、海外共同研究者であるAnnabella Selloni教授(米国プリンストン大学)を平成21年8月に訪問して格子振動の理論シミュレーションの可能性について意見交換した。Selloni教授は平成22年3月に研究代表者を神戸に訪れて、さらに議論をかさねて実効的な共同研究体制を構築しつつある。
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