研究概要 |
有機金属錯体(シアノ錯体,オキサラト錯体)を前駆体とした複合金属酸化物触媒について検討を行った.高表面積を有するペロブスカイト型酸化物触媒を得るために,前駆体であるシアノ錯体の焼成条件(焼成温度,焼成時間)を変化させペロブスカイト型酸化物LnFeO_3の調製を行った.大気中焼成において,SmFeO_3では650℃,5hで9m^2g^<-1>,LaFeO_3では500℃,2hで18.5m^2g^<-1>のペロブスカイト型酸化物の単一相が得られた.さらに,シアノ錯体の焼成雰囲気を変化(種々のガス流通下で焼成)させてペロブスカイト型酸化物LaFeO_3の調製を行ったところ,酸素,オゾン(150ppm)流通させた場合,250℃,1hでLaFeO_3が得られた.一方,空気,窒素,二酸化炭素流通した場合,目的物は得られず,焼成雰囲気はペロブスカイトの形成に大きく影響することが明らかとなった.これは,前駆体であるシアン錯体が有するシアノ気の分解(空気中で約300℃で分解)が高酸化雰囲気で促進されたため,低温でペロブスカイト型酸化物が形成したと考察した.また,これらペロブスカイト型酸化物のCO酸化触媒活性は比表面積の増加に伴って向上することがわかった.さらに,Aサイトランタノイド種はペロブスカイト型酸化物の単一相形成温度に影響を与え,イオン半径の低下にともなって単一相形成温度は高くなることが明らかとなった.これはイオン半径の低下とともにトレランスファクター(許容因子)が理想的な1からずれ結晶格子の歪みが大きくなることに起因すると考察した. また,ペロブスカイト型酸化物の凝集を防ぎ,高表面積を得るために,シアノ錯体以外の低温で焼成可能な金属錯体を前駆体とする調製法について検討した.シュウ酸を配位子とした遷移金属オキサラトカリウム塩とサマリウムイオンから得られた遷移金属オキサラトサマリウム錯体(前駆体)を合成し,その前駆体を焼成することでペロブスカイト型酸化物の調製を試みた.XRD測定結果から,比較的低温領域からペロブスカイト型酸化物が生成すること,低温で焼成するほど結晶子径が小さく,比表面積が増大することがわかった.
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