研究概要 |
酪農学園大学から乳房炎罹患牛から分離した黄色ブドウ球菌60種の提供を受け、染色体DNAの分離、16SrRNAをコードするDNA領域のシーケンスを行ったところ、59種がS.aureusであり、一種がS.sp.と同定された。さらに、Protein-Aをコードする遺伝子領域のシーケンスを行い、細胞結合ドメインX(spaX)の繰り返し配列数からS.aureusを6種に分類した。昨年度に単離した黄色ブドウ球菌特異的ファージ2種(φSA012,φSA039)を用いて、59種のS.aureusに対する被感染性をプラークアッセイ法により確認したところ、すべての菌体に対し2種のファージは感染性を示した。本研究によりスクリーニングされた2種のファージを用いることにより、これらS.aureusのすべてを制御可能であることが示された。乳房炎は黄色ブドウ球菌以外の菌体感染によっても起因される。別途提供されたコアグラーゼ陰性のブドウ球菌CNS(Coagulase negative Staphylococcus)16種を用いて同様の実験を行ったところ、2種のファージに対して被感染性を示した菌体と、示さなかった菌体が存在した。 抗生物質やファージにより黄色ブドウ球菌を制御する際、凝集体内の拡散が律速となり、懸濁状態の菌体よりその制御が難しくなる。そこで、黄色ブドウ球菌の凝集機構を定量的に評価すると共に、その凝集機構を解明した。凝集体形成能は沈降速度をモニタリングすることで定量化できた。黄色ブドウ球菌は源乳中では凝集するがLBに代表される通常培地では凝集体を形成しない。源乳を分画し、各成分の凝集促進効果を定量したところ、脂肪滴、カゼインには凝集作用が認められなかった。ホエーに含まれるタンパク質が凝集性を示すことが特定された。これらの知見は牛乳房炎のファージセラピーを実践するうえで貴重な知見となる。
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