研究課題/領域番号 |
21360399
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
丹治 保典 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 教授 (00282848)
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研究分担者 |
宮永 一彦 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助教 (40323810)
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キーワード | クテリオファージ / 乳房炎 / 黄色ブドウ球 / ファージセラピー / 耐性菌 / 下水流入水 |
研究概要 |
黄色ブドウ球菌を対象としたファージセラピーに向け、牛乳房炎起因黄色ブドウ球菌のスクリーニングを行った。牛乳汁には多くの細菌が存在する。マンニット食塩寒天培地を用い黄色ブドウ球菌を分離し、さらに、コアグラーゼ(血漿凝固作用を有する菌体外毒素)陽性、ヘモライシン(溶血毒素)陽性の株を15種選び16SrRNAをコードするDNA-シーケンスにより、黄色ブドウ球菌であることを確認した。スクリーニングした黄色ブドウ球菌を用いて、黄色ブドウ球菌に感染するファージのスクリーニングを行った。都市下水流入水を対象にスクリーニングを行ったところ50数種の溶菌性ファージを得ることができた。都市下水にはヒトの糞尿が流入する。スクリーニングされた黄色ブドウ球菌感染性ファージの多くはヒト由来であると思われる。スクリーニングされたファージと黄色ブドウ球菌を用いて、各ファージの感染宿主域を調べた。スクリーニングされたファージの中でφSA012およびφSA039と命名したファージは比較的感染宿主域が広く、黄色ブドウ球菌に対し高い溶菌活性を示した。さらに両者を混ぜたカクテルは、耐性菌の出現を遅らせるか完全に押さえることができた。 S.aureusは原乳中で凝集体を形成した。凝集メカニズムを解析したところ、負に帯電したS.aureusが、正に帯電した原乳中の成分、例えば乳清に含まれるタンパク質に引き寄せられ、核として凝集体をつくり、静電的な相互作用で結合することを明らかにした。また、原乳培地にある濃度の塩を添加すると中和されて、相互作用が弱まり、そのため凝集が抑制されることを観察した。 現在、酪農学園大学と共同で牛乳房炎の治療に向けたin vivoの実験を進めている.
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