研究概要 |
実際培養系における細胞挙動および組織構築に関する定量的解析と仮想培養系のための培養シミュレータの構築を行った.培養シミュレータの構築は,セルラーオートマトン法を用い,液相分布および細胞分布を計算する仮想培養プラットフォームからなり,細胞挙動ならびに培養操作を加味した細胞挙動モジュール培養操作モジュールを組み合わせることにより,種々の組織構築過程を表現する. 種々の細胞挙動を有するモデル集塊形成組織として,角化細胞からなる培養表皮シート形成,軟骨細胞をコラーゲンに包埋した培養軟骨の形成を対象に検討を行い,平成21年度は,システムバイオロジーを基盤とした組織形成シミュレータの構築を以下の項目を実施した, 上皮シート形成機構:角化細胞などの上皮細胞は,積層シートを形成する.その際,分化時には,基底層(最下層)において,非対称分裂(分裂細胞(基底層)と非分裂細胞(基底上層))を引き起こし,積層化を引き起こす.さらに,基底層における増殖可能細胞の頻度は,経時的に減少し,積層シート内での基底層の安定性は,シートの重層能力および,移植後の治癒効果に影響を及ぼす.そこで,分裂,接触阻害を考慮した単層培養時の増殖モデルと伴に,分化時の積層過程における基底層安定性を定量的に評価することで,安定性を考慮した上皮シート形成モデルを構築した. ゲル内細胞集塊の形成機構:軟骨組織の培養において,ゲル内での酸素やタンパクなどの培地成分物質移動現象,細胞増殖,細胞外マトリックス生成が時空間的変化を伴って組織が形成される.ヘテロな環境(濃度分布)は,増殖をヘテロに変化させ,よりヘテロな細胞分布を生じさせると考えられる(受動的集塊形成).細胞分裂,接触阻害,培地消費を考慮し受動的集塊形成を表現できる3次元増殖モデルを設計し,酸素,タンパクの物質移動を考慮した空間的細胞増殖モデルを構築し,培養組織形成を解析した.
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