研究概要 |
ヒト組織培養中に生じる環境的ヘテロ集団(不均一性),細胞的ヘテロ集団(不均質性)に対する形成機構の解明を目指し,細胞レベル(微視的レベル,μmオーダー)での増殖・分化の現象を局所把握,細胞ごとに生じるイベント(分裂・遊走・物質生成,シグナリング)を生物的パラメータにて整理する.実在培養(in vitro culture)のデータを基に,細胞間のコミュニケーションを加味したモデル構築を行う.さらに,ヘテロ性を考慮し,かつ立体的・時系列的変化に対応したシミュレータにて,仮想培養(in silico culture)を実施する.このシステムバイオロジーを基盤としたシミュレーション構築を,組織レベル(巨視的レベル,mm, cmオーダー)での集塊増殖,分化,シグナリングの機構解明へ展開し,組織生産における工程管理ならびに品質管理への貢献を目指す 平成22年度は,実際培養系における細胞挙動および組織構築に関する定量的解析と仮想培養系のための培養シミュレータの構築を並行して行った.培養シミュレータの構築は,セルラーオートマトン法を用い,液相分布および細胞分布を計算する仮想培養プラットフォームからなり,細胞挙動ならびに培養操作を加味した細胞挙動モジュール培養操作モジュールを組み合わせることにより,種々の組織構築過程を表現できた 特に,モデル集塊形成組織として,角化細胞からなる培養表皮シート形成,遊走性を有する筋芽細胞増殖を対象に検討を行い,システムバイオロジーを基盤とした組織形成シミュレータの構築の完成度を高め,各モジュール化を構築した また,5層の筋芽細胞積層シートにおいて,シートの流動性について,分子の拡散現象と見立て,定量的解析を行った.そこで,積層細胞シート内における細胞流動性を表現できるモデルを構築し,実挙動との比較を行うことを可能とした
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