研究概要 |
粒径2mm以下に粉砕したトウモロコシ穂軸にUreibacillus thermosphaericusを乾燥重量比で1/10添加し、水分50%を保ち、50℃で好気的に120時間処理したところ、糖化率を35%から58%に向上させることができた。走査型電子顕微鏡で観察すると、細胞壁の表面構造が壊れ、繊維状物質が表面に露出していた。しかし、リアルタイムPCRで本菌の生菌数を追跡したところ、処理中に本菌は次第に死滅していくことがわかった。菌体あたりのリグニン分解能を向上させるため、栄養条件の検討が必要と考え、まず、17種アミノ酸、ビオチン、チアミンおよび無機塩から成る合成培地を作製した。この培地で本菌を培養したところ、菌体増殖が停止した後でリグニン分解酵素として、マンガンペルオキシダーゼ(以下MnP)が誘導され、この活性は培養における通気条件によって大きく影響されることがわかった。培地のアミノ酸を分析した結果、MnP活性が抑制される条件においては、Ser, Ala, Pro, Val, Cys, Ile, Trp. Met, Lysの濃度が高いことがわかった。このうち、Val, Pro, Cysについては、その添加によってMnP活性が抑制されることが確認できた。適切な種類と濃度のアミノ酸を供給することによって、脱リグニン処理中のMnP活性を高める実験を行う予定である。 Thermobifida fsucaのcellulase E1のセルロース結合ドメイン(CBD)を大腸菌にクローニングして調製し、これを蛍光標識したF-CBDを調製したところ、F-CBDはセルロースディスクに対して吸着定数1×10^5M^<-1>、解離速度定数9×10^5s^<-1>で結合した。単位バイオマス当たりのF-CBD結合量は糖化率と高く相関し、脱リグニンの程度の評価法として適切であることがわかった。今後は、単位バイオマス当たりのF-CBD結合量を経時的に測定し、その増加速度をリグニン分解比活性と定義し、これにより本菌の脱リグニン効果を評価する。
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