リグニン分解能を持ち、糖を全く資化しないUreibacillus thermosphaericusによるバイオマスの省エネ低コスト脱リグニン技術を確立するため、迅速な脱リグニン評価指標の確立、リグニン分解関連酵素の特定、分解活性の増強を行った。 まず、脱リグニンによる糖化率向上を迅速に評価する指標としてThermobifida fsucaのcellulase E1のセルロース結合ドメイン(CBD)を大腸菌にクローニングして発現させ、これを蛍光標識したF-CBDを調製した。F-CBDはセルロースに特異的に結合し、単位バイオマス当たりの結合量は糖化率と高く相関し、脱リグニンの程度の評価法として適切であることがわかった。 本菌の培養上清に含まれるタンパク質を各種クロマトグラフィーと電気泳動で分離して同定したところ、peroxidase活性をもつタンパク質3種とoxidaseと推定されるタンパク質が同定できた。oxidaseが過酸化水素を供給し、他3つの酵素が環境中の低分子をラジカル化することで、リグニンを分解していると考えられる。 本菌はGlu、Pro、Asp、Met、Ile、Leu、Val、ビオチン、チアミンおよび無機塩を含む培地で培養可能で、定常期以降にリグニン分解酵素を生産する。その後、Gluを逐次流加すれば分解酵素生産を長時間持続することができた。また、当初コーンコブの脱リグニン処理において、糖化率60%を達成するために乾燥重量としてバイオマスの1/10の菌体を要していたが、Gluを適切に供給することで、必要菌体量を当初の1/10に削減することができた。 今後は上述の4つのタンパク質をクローニングして大腸菌等で発現させ、再構成系を構築するなどしてU.thermosphaericusの脱リグニン機構を解明するとともに、その能力の増強を目指す。
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