研究概要 |
HIV急性感染期には(1)APOBEC3G,A3G(自然免疫)、(2)Envに対する中和抗体(液性免疫)、そして(3)細胞傷害性T細胞,CTL(細胞性免疫)の宿主免疫が複合的に働くにも関わらず、HIVの慢性持続感染は成立する。これは、HIVが感染成立後に多様なウイルス準種(quasispecies)を生み出して免疫機構から逃避するためである。急性感染期におけるウイルスの状態が、その後の病態進行・予後に影響することは明らかであるが、この時期におけるHIVの動向を網羅的に解析した研究は行われていない。そこで本研究では、急性感染期において各免疫応答の標的となるウイルス分子(1)A3Gと相互作用するVif、(2)中和抗体のターゲットとなるEnv、そして(3)CTLの主な標的となるGag(p24)の配列変化を解析することで、(1)エスケープ変異種の同定、(2)遺伝的多様性の比較、(3)コレセプター指向性の同定、そして(4)A3G認識配列内のG to A変異の頻度を解析するために用いる。本年度は、サンプル中のquasispeciesの出現頻度を想定し、パイロシークエンスプロトコルの確立を行った。10^ 5レベルのcDNA分子に対し、10^3,10^2,10^1レベルのターゲット分子を混合したモデル系を作製し、共通プライマーを用いて個別増幅率を確認し、安定した増幅効率が得られた。また同時に、ターゲット特異的プライマーを使用した個別増幅を検討した。ビーズ担体への増幅産物の固定化は、ハイドロゲルを使用したビーズトラップアレイの作製により、高効率に各チャンバーに1粒子を投じる制御を可能とした。パイローシークエンサーによる配列決定に必要な固定化分子数を求めたところ、10^7分子程度であることが明らかになった。この領域をRT-PCRにより増幅し、現在、2患者由来のウイルスサンプルをターゲットに解析を行っている。
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