研究概要 |
HIV急性感染期には(1)APOBEC3G,A3G(自然免疫)、(2)Envに対する中和抗体(液性免疫)、そして(3)細胞傷害性T細胞,CTL(細胞性免疫)の宿主免疫が複合的に働くにも関わらず、HIVの慢性持続感染は成立する。これは、HIVが感染成立後に多様なウイルス準種(quasispecies)を生み出して免疫機構から逃避するためである。急性感染期におけるウイルスの状態が、その後の病態進行・予後に影響することは明らかであるが、この時期におけるHIVの動向を網羅的に解析した研究は行われていない。そこで本研究では、急性感染期において各免疫応答の標的となるウイルス分子の配列変化を解析することで、対応する宿主応答について理解する。 本年度は、パイロシークエンスが可能な小型測定装置(本研究にて購入)にてパイロシークエンスの正確性の評価を行った。パイロプライマーの設計は、塩基置換等をデザインすることで、ターゲットの増幅効率の上昇、シークエンスのための前処理、シークエンスの状況検討を行った。模擬サンプルとして、ヒトDNAを用いて様々な遺伝子配列決定が正確に出来るかどうかの確認実験を行い、プロトコルの確定を行った。一方、実際のHIVサンプルでは、2症例についての血漿中のHIVのEnv領域遺伝子の増幅条件について検討を行った。Gp120全長の増幅をできるプライマーの設定を行い、pyrosequencing解析に持ち込むのに十分な量の産物を得ることができた。quasispeciesの出現頻度検討をパイロシークエンスにより行い、エスケープ変異種の同定、遺伝的多様性の比較、コレセプター指向性の同定を行う予定である。また、envと同様に宿主免疫の標的となるGagについても今後解析を行うことを予定している。
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