本研究の目的は、宇宙太陽発電衛星の実用に向けた本格的な発送電パネルを完成させることである。そのためには発送電パネルに必要な機能や仕様を明確化し、その要求を満たす性能を実現する。 まず第1回目のハワイ実験で用いたマイクロ波無線送電システムの改良をおこなった。レトロディレクティブ方式によるマイクロ波ビーム制御システムを有する送電パネルを完成させ、2009年9月にトロントで開催されたInternational Symposium on Solar Energy from Spaceでデモンストレーションに成功した。送電パネル1枚あたり20Wの電力を2.45GHzのマイクロ波で放射する。送電パネルを9枚並べて設置し、送電パネルから13m離れた位置にレクテナ付ローバーに送電する。パイロット信号送信機から送電パネルに向けて1.225GHzのパイロット信号を送信し、パイロット信号を受信した各送電パネルはレトロディレクティブ制御を行った上で、パイロット信号送信機に向けてマイクロ波ビームを集中させる。レトロディレクティブ制御の時は、パイロット信号送信機の場所に関わらずマイクロ波ビームは常にパイロット信号送信機に集中する。パイロット信号送信機をレクテナ付ローバーに近づけると、レクテナがマイクロ波ビームを受電する。レクテナは受電したマイクロ波を直流電力に変換し、ローバーのモーターを駆動する。また、ローバーの他LEDを接続したレクテナを使用し、パイロット信号送信機を近づける・離す・同時に移動することでLEDを点灯・消灯させた。 レトロディレクティブ方式によるマイクロ波のビーム制御の有効性が実証できたので、ハワイでの超長距離無線送電実験を計画している。ハワイのマウイ島ハレアカラ山とハワイ島マウナロア山の間で、静止軌道36000kmの伝送に相当するレベルでの実験を次年度に実施する予定である。
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