研究概要 |
平成22年度は高速衝撃損傷の数値シミュレーション法を確立することを主な目的として研究を行った。 昨年までに実施した実験によって明らかにされた2種類の積層板(一方向積層板,クロスプライ積層板)の損傷挙動を,有限要素解析によって再現した.表層のマトリックスクラックおよび層間はく離を模擬するために,コヒーシブ要素を導入するとともに最大応力説を適用した損傷進展シミュレーションを行い,実験結果をほぼ定量的に模擬することができた。また衝突速度が損傷に及ぼす影響も明らかにした. 一方,CFRP積層板の高速衝撃損傷進展シミュレーションを行うための粒子法の計算コードについて,三次元への拡張を目指して改良を行った. 以上の研究成果により,以下の知見が得られた。(1)表面および裏面のスプリッティングはそれぞれ飛翔球の沈降および板の曲げにより発生する。(2)一方向積層板,クロスプライ積層板における層間はく離形状はそれぞれ直線状,円状であり,後者のほうが面積が大きい。(3)内部のマトリックスクラックは一方向積層板では顕著であるが,クロスプライ積層板にはあまり見られない.(4)衝突速度が高いほど損傷領域はより広範囲になり,層内の繊維破断をもたらすものの,速度による損傷モードの違いはほとんど見られない.(5)内部のコーンクラックは有限要素解析による再現が困難であるため,粒子法の適用が必要である。 以上の知見は,CFRP積層板を航空機のエンジンや機体の構造部材として適用する際の設計指針を与えることが期待される。
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