レーザー核融合ロケットは、核融合反応で得られる高温・高速のプラズマを、磁気ノズルにおいて、磁場との相互作用を利用して運動方向を変えて推力を得ることができるため、高い比推力(燃費がよい)と大きい比出力(推力が大きい)が同時に達成でき、有人木星探査の実現には欠かせないロケットである。これまでの研究により数値解析からその実現性は示せたが、実験では示せていなかった。 そこで、レーザー核融合ロケットの研究における推進力獲得の実証に最重要課題である「磁気ノズル中のプラズマ挙動」について、阪大レーザー研のEUV(極紫外光)生成装置および大型レーザー装置(激光XII号)を利用し、プラズマの振る舞いをICCDカメラで観察した。また磁場の変化を磁気プローブで計測した。昨年度までは磁場の生成に永久磁石を用いていたが、本年度はパルス整形回路を用いて時間幅50μsの時間だけではあるが、プラズマ中に0.5Tを印加することに成功した。 磁場下での膨張プラズマの各種不安定性に関して、一方向のみ照射の場合はみられたが、12方向照射では押さえられていることが確認できた。磁気センサの結果より、反磁性キャビティができていることが確認された。プラズマの膨張速度に関して、100km/sの早い粒子と、10km/sの中速および3km/s程度の遅い粒子が存在することが確認できた。無次元パラメータε(ラーマ半径/プラズマ膨張半径)に関して、ε>1の条件下では磁気ノズルがうまく作用せずに、プラズマは素通りしていくことが確認できた。また、レーザー照射によるエネルギー伝達過程のシミュレーションも行い、実験結果と比較したところ、シミュレーションは、実験結果をほぼ再現した。 これらの知見をもとに磁気ノズルでの推力生成のメカニズムを解明し、最適な磁気ノズルを提案するのが次の目標である。
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