研究概要 |
研究は,ケーブル構造で保持された金属メッシュで反射面を構成し,展開機構を持つアンテナ反射鏡面構造を対象に,さらなる軽量化ための新たな構造トポロジーを創出することによって,現在,衛星に搭載されている10m級大形アンテナ反射鏡面のさらなる開口径の拡大を実現することを目的としている. 反射鏡の軽量化のためには,支持構造を軽量化することが最も効果的であるが,安易に軽量化すると剛性が低下し,支持構造が大きく変形して,鏡面精度が劣化する.そこで,本研究では支持構造の変形の影響を受けにくいケーブル構造と,ケーブル構造の精度に大きく影響を与える支持構造の変形モードの抑制とを行い,展開支持構造とを一体で考慮することで最適化し,構造要素を極限まで減らすことを目指す. 本年度は,支持構造の変形の影響を受けにくく単独で鏡面の精度を保証するケーブル構造を設計するため,任意の形状・張力分布とした平衡形状を設計する方法として,テンショントラス構造の概念に基づく設計アルゴリズムを検討した。さらに,支持構造については構造部材を極限まで排除し軽量化を図った構造を検討し,提案した設計法を基に有限要素解析モデルを作成し,解析作業を進めた.その結果,支持構造の変形モードに,鏡面精度に顕著に影響を及ぼすものと,影響をほとんど及ぼさないものが存在することを明らかにし,有害なモードをテンドンケーブルで抑制することで十分な精度で形状を得ることができることを明らかにした.また,市販の傘を支持構造とした簡易試作モデルを製作し,3次元形状およびケーブルの張力状態を測定することで,構造検証モデル製作へ向けた評価を行った.さらに提案するケーブル構造を実現するために必要な高剛性ケーブルを数種類の伸び剛性を想定して設計し,サンプル試作を行って,得られる剛性の限界と,非線形性等,剛性向上に伴う問題点を明らかにした.
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