研究概要 |
本年度は,密度約200kg/m^3から約1500kg/m^3までの各種CFRPを試作し,その成型技術の構築に成功し,これらCFRPを様々な高エンタルピ気流に曝し,基本的な熱防御性能を取得した.試験には,超高温材料研究所の高エンタルピ風洞(エロージョン試験機)を用いた. この試験に基づけば,試作した密度約300kg/m^3のCFRPは超軽量タイプであるにも関わらず,USERS宇宙機システムに採用された高密度CFRPと同程度の断熱性能,酸化損耗特性であることが分かった. さらに,これらCFRPを宇宙機に適用するための様々な調査も実施した.特に,CFRPを採用した宇宙機の熱・構造設計,また振動試験や衝撃試験の手法を詳しく調べた.さらに,本年度は熱機械分析装置を購入し,来年度からの詳細な熱機械物性の取得を可能とした. ところで,本年度は超軽量CFRPの内部温度および酸化による表面後退の時間履歴を予測するためのアブレーション解析コードの試作も行った.試計算を行い,その結果と理論解とを比較して,計算精度が良好であることを確認できた. また,本年度は超低密度CFRPの炭化層内で起こるコーキング現象を捉えるため,加熱した供試体の気体透過率と炭化層密度をそれぞれ計測し,電気炉加熱で炭化させた供試体と比較した.試験の結果,熱分解したガスが加熱面に向かって流出する際に,熱分解ガスの化学反応により炭化層に固体が析出するコーキング現象を示唆するデータが得られ,CFRPの質量損失量を正確に理解するためにはコーキング現象をモデル化する必要があることがわかった. 来年度は,宇宙航空研究開発機構が所有する高エンタルピ風洞および熱機械分析装置を用いて各種CFRPの詳細な耐熱データ,熱機械物性データやコーキングデータを取得し,それを上記解析コードに入力し,内部温度上昇や表面後退(質量損耗)などが予測できることを確認する.
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