研究概要 |
昨年度(平成21年度)は,密度約200kg/m^3から約1500kg/m^3までの各種CFRPを試作し,その成型技術の構築に成功し,これらCFRPを様々な高エンタルピ気流に曝し,超高温材料研究所(JUTEM)で基本的な熱防御性能を取得した.さらに, CFRPを宇宙機に適用するための様々な調査も実施した,特に,CFRPを採用した宇宙機の熱・構造設計,また振動試験や衝撃試験の手法を詳しく調べた.昨年度は熱機械分析装置(TM A)を購入し,詳細な熱機械物性の取得を可能とした. 本年度(平成22年度)は,昨年の成果を活用し,先ず宇宙機に適用でき得る様々な種類のCFRP熱防御材を製作した.具体的には,密度約200kg/m^3から約1500kg/m^3までのCFRPを製作し,これら材料の熱物性や機械物性の非線形温度物性を取得した.次に,上記した種々CFRPを様々な高エンタルピ気流に曝すことで詳細な熱防御特性(表面損耗速度,材料表面および内部の温度上昇速度,熱応力の空間分布)を取得した. 加熱試験は超高温材料研究所(JUTEM), JAXAおよびドイツ航空宇宙研究所(DLR)で行い,その試験条件は0.5MW/m^2 (JUTEM)~11.OMW/m^2 (DLR), 0.33kPa (JUTEM)~84kPa (DLR)と多岐にわたった.特にドイツDLRの試験では,日本と欧州にとってはじめての現象(例えば,材料表面の昇華による損耗現象)を確認できるなど,極めて有用な試験結果を取得できた. 来年度(平成23年度)は,本年度取得した加熱試験結果により,材料表面の温度や損耗,内部の温度や質量減少,さらに熱応力の空間分布などを予測できる数学モデルを作成し,その妥当性を高エンタルピ流試験結果と比較評価することで確認する予定である.また,開発したCFRPアブレータを採用した宇宙機の基本的な熱・構造設計も実施し,従来の宇宙機(JAXAのはやぶさ, USEFのUSERS宇宙機システム, NASAのガリレオプローブなど)と比較して軽量化が可能であることを実証する.
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