研究概要 |
局所熱伝達率と鋼板直上ガス温度が時間で不変と仮定する著者らの伝熱推定法を,ガス予熱火炎の伝熱特性を考慮できるよう改良し,水素LP混合ガス(アクアガス)およびLPGを用いた点加熱試験を実施して予熱ガス火炎の伝熱特性を同定した.さらに,各ガスの化学的発熱量と熱的効果の関係を調べるとともに,点加熱試験で同定した伝熱特性を用いてピアシング可能最短予熱時間を推定した.その結果,以下の知見を得た。(1) 入熱パラメタ分布の遺伝子表現を改良した結果,ガス加熱予熱時の伝熱パラメタの高精度推定が可能になった。(2) 予熱ガスの熱的効果は燃焼ガスの発熱量のみで評価することはできない。(3) 点加熱試験で同定した伝熱パラメタを用いて推定した,ピアッシング試験における発火温度に到達するまでの時間は,ピアシング試験の最小予熱時間にほぼ一致した.(4) 本研究により、予熱火炎の熱的効果とピアッシング性能の関係を定量的に調査することがはじめて可能になった。 続いて,表面を研磨した鋼材の予熱なし酸素切断実験を実施し,燃焼固体から被切断材に供給される熱量を同定した.その結果,以下の知見を得た.(1) 被切断材を200度以上に予熱しないと,表面を研磨しても予熱なし酸素切断を継続することはできない.(2) 予熱の有無以外の条件を一致させても,予熱のあり・なしによりカーフ形状,燃焼反応速度が大きく異なる.(3) 燃焼発熱を線熱源に理想化した場合の予熱ありガス熱切断の単位距離当たり発熱量は,予熱ありの場合に予熱なしの場合より大幅に大きくなる.(4) 酸素ガス切断における予熱は,ガス火炎から熱を供給するだけでなく,固体燃焼を活性化して燃焼発熱を加速する.
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