研究概要 |
本研究の最終目標は,一つの坑井で入気とガスの生産を行う同軸型石炭の地下ガス化(UCG)手法の開発を視野に入れ,AE/MS(Acoustic Emission/MicroSeismicity)計測により燃焼領域の可視化を行う安全で環境に配慮したUCG技術を確立することにある。そのために平成22年度には基礎研究として,(1)炭層模型供試体によるガス化実験と,(2)ガス化に伴う炭層破壊数値シミュレーションを計画した。また,それらに加えて,石炭の熱破壊に関する基礎実験も行った。 その結果,ガス化実験により,以下のことがわかった。 1,約8時間で,約5kgの石炭が燃焼し,発熱量はほぼ10MJ/m3であった。 2,熱電対の温度変化から,燃焼領域の移動速度はおおよそ0.03m/hと見積られた。 3,燃焼領域は,リンキング孔に沿って移動した。石炭の局所的な破壊により,移動速度および燃焼領域に変化が見られた。 4,AEイベント数と温度には正の相関が見られ,AE震源は燃焼領域と共に移動,拡大した。 5,同軸型UCGにおいても,リンキング方式と同様のガス成分を回収できることがわかった。しかし,ガス化領域の拡大は難しいこともわかった。 UCGシミュレータの開発では,以下の結果を得た。 1,FEMによる熱応力解析から,リンキング孔周辺の熱応力に伴い,炭層破壊域が形成される。 2,AE波形解析によりき裂分布モデルを作成し,その空間に格子ボルツマン法を適用して流体移動のシミュレーションを行った。その結果,き裂が流速変化を引き起こすことを確認した。 石炭の加熱試験から,以下のことがわかった。 1,石炭の加熱面からの温度勾配に応じて,AEを伴い内部にき裂が発生,進展することがわかった。 2,き裂は,石炭内の潜在弱面に沿って進展することが,X線CTによりわかった。 3,き裂発生領域は,石炭の熱分解領域に相当すると推察された。
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