研究概要 |
地球温暖化の速効的対策であるCO2(二酸化炭素)地中貯留では,大量のCO2を岩盤内に圧入する必要があるが,地下の圧力温度条件ではCO2は水の1/100~1/10の小さな粘性を有する超臨界状態になる.研究代表者は,水と水に比べて粘度の大きな油を破砕流体に用いて花崗岩を水圧破砕する実験を行った経験があるが,破砕流体の粘度が小さいと圧入で生じる亀裂は幅が小さく,また亀裂が数多く分岐しながら進展する傾向が見られた.このことは,水より粘性の低い超臨界CO2を岩盤中に圧入すれば水よりも容易に広範函に貯留できるが,同時に遮蔽性を期待するキャップ・ロックに対しては水に比べて漏洩あるいは破壊を生じやすい傾向があることを示唆している. そこで本研究では,花崗岩供試体を用い超臨界CO2による水圧破砕を行ってAEを測定し,研究代表者が以前行った粘度の大きな油や常温の水による水圧破砕実験結果と比較して,超臨界CO2の岩盤内への流入特性を明らかにするとともに,キャップロックの安定性への影響を検討する.さらにCO2貯留層を模擬した堆積岩供試体を用いて同様の実験を行い,現実のCO2地中貯留における大量かつ効率的な圧入の可能性と問題点を明らかにする. 平成21年度は,一辺16cmの立方体供試体に3方向からフラット・ジャッキを用いて地下深部の地圧を模擬した拘束圧を加え,かつその状態で供試体中央の円孔から超臨界CO2を高圧で圧入できる実験装置を作製した.CO2の圧入にはシリンジポンプを使用し,また供試体を湯に漬けることで,CO2が超臨界となる温度圧力条件を満足させ,花崗岩供試体を用いて水圧破砕を行うことに成功した.さらに実験時にはAEを測定するなど予備的なデータの取得を行い,平成22年度に目的とする実験を安定して行い,再現性を有する信頼性の高いデータを取得できるめどを得た.
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