研究概要 |
二酸化炭素(CO_2)による地球温暖化の緊急避難的な対策として,火力発電所や製鉄所などから排出されるCO_2を分離回収し,地中に貯留するCCS (Carbone dioxide Capture and Storage)技術の利用が挙げられる.安全確実な地中貯留を行うためには,圧入されたCO_2の地中での挙動を把握しておくことが望ましい.CO2が圧入される地下深部においては,その圧力ならびに温度からCO_2は超臨界状態になることが予想されるが,岩盤温度が低い場合には液体状態になる.そこで本研究では,これらの状態のCO_2を用いて岩石の水圧破砕試験を行い,圧入に伴う岩石の亀裂進展や流動特性を把握する実験を行っている. 平成22年度は昨年度の予備実験の成果に基づき,一辺17cmの立方体花崗岩に3方向からフラット・ジャッキを用いて地下深部の地圧を模擬した1MPaの拘束圧を加え,かつその状態で供試体中央の円孔から超臨界CO2と液体のCO2を高圧で破砕し圧入する実験に成功した. 平成22年度の研究成果をまとめると次の通りである (1) 超臨界CO_2と液体CO_2による水圧破砕試験の破砕圧力を比べると,超臨界CO_2による破砕試験の方が破砕圧力が小さい傾向がみられた (2) 破砕直前の流体の圧力の上昇速度が液体CO_2に比べ超臨界CO_2の方が小さいことから,超臨界CO_2による破砕では,破砕直前に破砕孔の孔壁から岩石内部に浸透した流体の量が多いのではないかと思われた. (3) AE震源分布とフラクタル次元解析による震源のバラつきの評価により,液体CO_2で破砕した場合は亀裂が平面的に分布するのに対し,超臨界CO_2で破砕した場合は平面から逸脱して細かく分岐して,より立体的に分布する傾向がみられた. 以上の結果を踏まえ,今後は拘束圧のより大きな状態で実験を繰り返し,実験結果の再現性を慎重に検討したい.
|