二酸化炭素(CO2)による地球温暖化の緊急避難的な対策として,火力発電所や製鉄所などから排出されるCO2を分離回収し,地中に貯留する方法が考えられている.安全確実な地中貯留を行うためには,圧入されたCO2の地中での挙動を,把握しておくことが望ましい.CO2が圧入される地下深部では,その圧力と温度からCO2は一般に超臨界状態になるが,岩盤温度が低い特殊な場合には液体状態になることもある.そこで本研究では,一辺17cmの立方体花崗岩に地下深部の地圧を模擬して3方向から6,4,3MPaの拘束圧を加え,その状態で供試体中央の円孔から超臨界CO2,液体CO2,水,粘性の高い油を高圧で圧入して破砕する実験を行った.その結果,次の結果が得られた. (1) 破砕流体の粘性は超臨界CO2,液体CO2,水,油の順に1オーダーずつ大きくなるが,水圧破砕試験の破砕圧力は粘性が小さいほど小さくなる傾向がみられ,超臨界CO2による破砕圧力は最も小さかった. (2) 破砕時にAE(Acoustic Emission) を観測してその震源を決定し,AE震源の空間分布に対して近似平面を求めその平面からの震源の平均距離を求めるとともに,震源分布のフラクタル次元を求めた.その結果,油などの粘性の大きな流体の破砕では亀裂が平面的に分布するのに対し,超臨界CO2などの粘性の小さい流体の破砕では平面から逸脱して細かく分岐してより立体的に分布する傾向がみられた. 現実の二酸化炭素の地中貯留では,圧力の調整は圧入流量を調節することにより行うため,平成24年度は流量の違いによる破砕圧力や亀裂状態の変化を検討した.その結果,今年度の室内実験の範囲では,圧入流量は流体の粘性に比べて破砕圧力や亀裂の状態に対する影響が少ないことが分かった.
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