レーザー材料の物性値の連続制御とレーザー増幅器構成を独自に考案し半導体レーザー励起全固体レーザーに応用することで、これまで実現が難しかった高繰り返し(~1kHz)・高パルスエネルギー(~1J)を両立するレーザーを開発し、新規開発した微弱散乱光の高速受光システムと組み合わせることで3次元リアルタイムライダーシステムを実現する。 今年度は研究最終年度であり、受光システムの設計製作および信号光のSN向上を行い前年度までに開発されたレーザー光源と組み合わせることでリアルタイムライダーシステムを構築し、デモンストレーションを通して性能向上を図った上で将来の方向性について検討した。高速受光システムの設計/製作では、ライダー信号光の受光素子としてSi-アバランシェフォトダイオード(APD)を用いた。素子はYAGレーザー用のφ3.0 mmの大受光面を持っており、コンパクトな受光系とするために、アンプ・バイアス電源を組み込んだ特注モジュールを製作した。波長範囲は400~1100 nmで、遮断周波数は100 MHzと非常に高速である。ライダー信号の観測には高速デジタルオシロスコープを用いた。同時に2 chの表示ができ、500 MHzの帯域幅を持っている。GP-IBケーブルでPCから操作が可能であり、ソフトウェアを用いてデジタルデータを自動取得可能とした。レーザー光源にはビーム径を5倍にするビームエキスパンダ-と戻り光を防止するアイソレ―タ-が組みこんだ。また、信号光のS/N比の向上として昼間での観測を可能にするために、Si-APDの素子の前に高性能レーザーラインバンドパスフィルターを用いた。デモンストレーションとして数kmの範囲でエアロゾルや雲の動きの観測に成功し、より早い時間変化に対応できる優位性を示した。
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