研究概要 |
本研究の目的は、超伝導体の種類に依らない基盤技術として、導体および冷却構造の最適化、新技術の導入による高磁場、高熱負荷への対応、次世代で主流になると考えられる伝導冷却型超伝導マグネットの設計指針を確立し、次世代の核融合装置用超伝導マグネットの高性能化に資することにある。伝導冷却方式の超伝導マグネットを設計する場合、使用温度の相違による材料の熱物性の変化に注意を払う必要がある。高温超伝導マグネットは低温超伝導マグネットに比べて冷却し易い印象を受けるが、実際には高温超伝導マグネットの方が、巻線内部で発生した熱を外部に取りだし難く、局所的な温度上昇による熱歪みの発生やそれによる超伝導特性の劣化が起きる可能性が高い。このことは、温度上昇に伴う比熱の上昇に熱伝導度の上昇が追いつかないためであり、20K以上の運転温度でも熱拡散率の高い冷却部材を開発する必要がある。本研究では、冷却の新技術としてシート形状に加工した自励振動式のヒートパイプを巻線内にスペーサとして挟み込むことにより、高熱伝導率と低比熱を両立した高熱拡散率のコイル構造を実現する。更に、使用する温度に応じて、ヒートパイプの作動ガス及び動作特性の最適化を図ることにより、低温超伝導から高温超伝導まで共通した冷却構造最適化の設計指針を確立することを目標としている。平成21年度は、自励振動式ヒートパイプの作動流体に水素、ネオン、窒素を用いた低温での動作実験を行い、17-25K(水素),26-32K(ネオン),67-80K(窒素)の幅広い温度範囲で安定な動作を確認した。測定した等価熱伝導率は500-3,000W/m-K(水素),1,000-8,000W/m-K(ネオン),10,000-18,000W/m-K(窒素)に達し、高純度金属の低温での高熱伝導率に匹敵している。低比熱で高熱拡散率の自励振動式ヒートパイプを超伝導マグネット内に組み込むことにより、高性能で高レスポンスな冷却構造の実現が可能となることを実証した。
|