研究概要 |
本研究の目的は、超伝導体の種類に依らない基盤技術として、導体および冷却構造の最適化、新技術の導入による高磁場、高熱負荷への対応、次世代で主流になると考えられる伝導冷却型超伝導マグネットの設計指針を確立し、次世代の核融合装置用超伝導マグネットの高性能化に資することにある。 平成22年度には、冷却特性を最適化した高性能超伝導マグネット例として、伝導冷却型超伝導マグネットの設計検討を行った。実際の大型超伝導マグネットでは総長数10kmに及ぶ長尺導体の製造方法を確立する必要がある。このための技術開発として、伝導冷却型超伝導導体の長尺導体製造方法の検討および技術開発を行った。溝加工したアルミニウム合金材の長尺化方法、接合方法、導体組立、および長尺の摩擦撹拌接合方法等について、技術的な課題を明らかにし、製造方法を確立すると共に、導体組立時及び組立後の曲げ加工で、超伝導特性が劣化しないことを短尺導体試験を行って確認した。 冷却技術の開発では、自励振動式ヒートパイプの構造の最適化研究を行い、設置角度による動作不安定性を解消した。作動流体に水素、ネオン、窒素を用いた自励振動式ヒートパイプの動作実験を行い、17-30K(水素),26-39K(ネオン),67-91K(窒素)の幅広い温度範囲で安定な動作を確認した。測定した等価熱伝導率は最大で11,480W/m・K(水素),19,440W/m・K(ネオン),18,000W/m・K(窒素)に達し、高純度金属の低温での熱伝導率を凌駕している。また、中央加熱両端冷却のヒートパイプ構造とすることにより、設置角度による動作の不安定性を解消することができることを実験で示した。これらの成果により、高熱伝導率で低比熱、高熱拡散率の自励振動式ヒートパイプを超電導マグネット内に組み込むことにより、高性能で高レスポンスなマグネット冷却構造の実現が可能であることを示した。
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