研究概要 |
本研究の最終年度として、平成23年の成果に加えこれまでの研究成果を総括した。高温及び低温の超伝導体の種類に依らない基盤技術として、超伝導マグネットの導体および冷却構造の最適化、新技術の導入による高磁場、高熱負荷への対応、伝導冷却型超伝導マグネットの設計指針の確立を目的として研究を行った。Nb_3Sn等の金属間化合物の超伝導撚線を熱伝導率に優れ機械的な強度も確保できるアルミニウム合金で被覆した導体を開発した。アルミニウム合金は超伝導体の熱処理温度に耐えられないため、熱処理した超伝導撚線にアルミニウム合金を被覆する必要がある。あらかじめ溝加工したアルミニウム合金に熱処理した超伝導撚線を挿入し、蓋をかぶせて溶接した。ここでの新技術として摩擦攪拌接合による超伝導部分の温度上昇を伴わない接合方法を採用し、超伝導特性の劣化がないことを実験で確認した。更に、高温超伝導の核融合用大型マグネットへの適用を目指し、マグネットの冷却構造を最適化する研究を実施した。20K以上の運転温度では、構成材料の熱拡散率が著しく低下するため、局所的な発熱により過度の温度勾配が発生する可能性が高い。冷却の新技術として自励振動式のヒートパイプ(OHP)を巻線内に組み込むことにより、高熱拡散率の巻線構造を実現することを目指した。極低温と室温では作動流体の密度などの物性値が大きく異なるため、独自の工夫を施すことにより、OHPの極低温域での動作を世界で初めて系統的に実証した。作業流体に水素、ネオン、窒素を用いた場合の動作温度範囲はそれぞれ17-30K、27-39K、67-91Kと広いこと、および、実効的な熱伝導率が10,000W/m/Kを超えることを明らかにした。更に、実験で得られた特性をレイノルズ数、プラントル数、ヤコブ数などの無次元数で整理することにより、OHP構造から熱輸送量を求める経験式を導出した。これらの成果に基づき冷却構造を最適化した高性能の超伝導マグネットについての設計指針を得た。
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