研究課題
大型ヘリカル装置LHDのこれまでの実験において、中性粒子入射(NBI)電流駆動を利用してプラズマ中心以外にゼロ磁気シア面を有する反転磁気シア(RS)配位を実現し、高速イオン励起の反転磁気シアアルヴェン固有モード(RSAE)と帯状流の一種の測地線音響モード(GAM)を見出した。本基盤研究は、これらのRSAE、GAM及びこれらの非線形結合で励起される巨視的モードの高速イオン輸送及び背景プラズマに与える影響を明らかにすることを目的としている。トカマクプラズマの反転磁気シア配位では、中心部で負磁気シア、周辺部で正磁気シアであるのに対し、LHDで実現されたRS配位では磁気シアがトカマクのRS配位と逆符号を持つという特徴を有する。このように異なるRS配位ではRSAEとGAMの発生条件がトカマクとヘリカルプラズマで異なり、両者の特性比較からこれらの励起条件、さらに高速イオン輸送への影響、及び背景プラズマにおける輸送障壁形成との相関等についてトロイダルプラズマ共通の理解が期待され、意義が大きい。本年度は、昨年度に引き続き(1)RSAEとGAMの発生パラメーラ領域の探索、(2)RSAEとGAMの空間構造測定、及び(3)RSAEとGAMの高速イオンの再分布や損失へ及ぼす影響の基礎データの収集、を行った。今年度は、逆方向電流駆動により反転磁気シアプラズマを生成して、ミリ波反射計と重イオンビーム(HIBP)によりRSAEとGAMの電子密度と電位揺動計測を行った。特に、HIBPのビーム軌道に対するプラズマ電流の影響をかなり低減でき、ゼロ磁気シア層より内側でGAMの電位揺動を観測した。昨年度に比べ電位揺動の実効値が0.5kV程度と低い値であった。この要因は、プラズマパラメータ(トロイダル磁場、電子密度など)の差異によるものと思われるが、次年度の重要な課題となっている。RSAEとGAMの高速イオンイオン輸送への影響を、損失イオンプローブで観測を試みたがこれらは顕著な高速イオン損失損失を引き起こしていない。次年度は、高速イオン荷電交換分光法や荷電交換中性粒子エネルギー分析法などによりプラズマ内に閉じ込められた高速粒子の径方向輸送が今後の重要な課題となっている。
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