研究概要 |
放射性廃棄物の処分場を地下に構築するためには多量のセメント系材料を要する。セメント系材料の主成分であるカルシウムシリケート水和物(CSHゲル)は,構造が不安定なことにより結果的に様々な核種を内包する能力を持つ。本研究では,処分システムが地下水により飽和する環境を想定し,陰イオン性核種の安定化を促進するCSHゲルのCa/Siモル比を実験的に探索すると伴に,そのメカニズムを明らかにすることを目的とする。 本年度は,陰イオン性核種であるヨウ素の化学形態に着目し,陽イオン性核種(Eu)とも対比しながら,核種とCSHゲルとの相互作用を検討した。実験では,亜塩素酸ナトリウムを用いてヨウ素溶液の酸化還元電位を調整し,ヨウ素酸イオンおよびヨウ化物イオンの双方の化学種を得た。また,CSHのCa/Si比を0.1~1.8の所定値(6点)に調整し,処分場の再冠水を考慮して乾燥過程を経ないCSH試料を用意した。さらに,核種との収着の手順にも着目し,CSHの合成・養生後に核種を収着させる水和試料と,CSHの合成時に核種を投入して養生する共沈試料を,窒素雰囲気,室温環境において各々用意した。その結果,ヨウ化物イオンおよびヨウ素酸イオンの何れの場合もCa/Sl比0.1~1.8においてCSHゲルと強い相互作用を示した。また,この傾向は水和試料および共沈試料の双方において見られた。加えて,CSHの構造および核種の結合状態を把握するために,XRD,FT-IRおよびラマン分光を用いた構造の同定を行った。XRDではCa/Si比0.1以外の試料においてCSHの構造を持つことを確認した。また,FT-IRではヨウ素によるCSHの結合の変化は認められなかったが,ラマン分光スペクトルより,共沈試料においてCa/Si比が0.1以上の高い場合,ヨウ素の収着によりCSH内のシリカの架橋酸素が解重合する傾向にあることが分かった。
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