研究概要 |
研究の二年目である本年度は、原子力プラントシミュレータにおける携帯型NIRSによる脳機能測定の予備的な検討を行った。 (1)プラント異常発生シナリオの検討 本年度は、原子力プラントシミュレータにおける携帯型NIRS実験を行う際に利用する異常シナリオの検討を行った。本研究では異なる難易度のシナリオを対象にしているときの脳活動の違いを明らかにすることが目標であり、そのためにはシナリオの難易度を定量的に評価する必要がある。これまでのシミュレータを用いた訓練ではインストラクタが主観的に難易度の判断を行っていたが、本研究ではシナリオの認知的複雑性を客観的に定義する手法を開発しその有効性を確認した。具体的にはシナリオの実行時のプラントのパラメータの挙動、警報の発生状態をもとにして、D(Dynamism),I(Interaction),U(Uncertainty),R(Perceived Risk)の四つの軸でシナリオの認知的複雑さを定義し、評価を行い、インストラクタの主観と概ね一致することを明らかにした。脳活動に関しては特に状況の不確定性(I)と、主観的に感じられるリスク(R)が影響を与えることが予想される。 (2)フルスコープシミュレータ予備実験/(3)携帯型NIRSによる測定予備実験 原子力プラントのフルスコープシミュレータにおける携帯型NIRSによる脳機能計測の有効性の評価を行い、ヒューマンファクタ研究への適用性を評価する予定であったが、同装置が平成22年11月に他の使用者が使っている最中に破損・故障した。同装置は現在試作段階の装置であり、破損部品の調達及び修理に時間を要し、当該実験の開始に4ヶ月の遅延が生じた。これに伴い関連経費の繰り越し申請を行って平成23年度に実施の予定である。
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