現在の原子力規制は合理性・実効性を欠き、信頼醸成を阻害する原子力システムをもたらしている。そこで、原子力規制に関する適切なガバナンスを実現するための俯瞰的研究を行う必要がある。現在までの研究の取り組みによって、原子力安全を確保し、維持するために不可欠な、原子力法制を取り巻くガバナンス課題の大きな枠組みが明らかになってきた。すなわち、原子力を有効に利用していく際に必要とされるガバナンス(本研究ではこれを原子力利用ガバナンスと呼ぶ)を確立するために、民間規格や安全協定等も含めた社会技術に関する研究を行うことが重要である。本研究では、「セーフティガバナンス」、「セキュリティガバナンス」、「地域の合意形成プロセス」という3つの領域におけるガバナンスに焦点を当てて、分析、検討を行い、新たな制度や枠組を提案することを目的とする。 平成22年度は、特に、「地域の合意形成プロセス」について、国と県、立地市町村の役割分担をも含んだ制度、特に安全協定に着目した基礎自治体の役割分担を論じた。また、現在立地している発電所のプロセスを調査し、それに寄与する因子を抽出した。高レベル放射性廃棄物に関しては、国民の視点から見た場合における公募を成立させるための付加的なプロセスの設計に資する分析を実施した。加えて、高レベル放射性廃棄物処分立地プロセスに関する一般国民の認知に関する調査を実施し、高レベル放射性廃棄物の理解の道筋を明らかにした。
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