研究概要 |
(1)まず,文献調査と現地関係者インタビューに基づいて,東洋町における紛争の推移を決定づけた主要因と,主要なステークホルダー,アクション・イベント間の因果関係について分析した.次に,一連の政治過程の中で,事態の推移を決定づけた主要因を抽出し,アクション・イベント間の因果関係についての分析した.以上の政治過程分析によって,東洋町において応募取り下げに至った支配的要因と,対立を招いた「公募制度の下では解決が困難な要因」を明らかにした. スイスにおいても,東洋町同様,文献調査とインタビューに基づいて,ヴェレンベルグにおける紛争の推移,および州民投票における態度形成を決定づけた主要因と,アクション・イベント間の因果関係について分析した.これら政治過程分析によって,ヴェレンベルクに処分場が立地しなかった原因である州民投票における態度形成要因を明らかにした. (2)日本・スイス二国間の比較分析については,両国の政治過程を分析したところ,制度制定・アクション等のイベントのみならず,関係者の態度形成が重要な要因であることが明らかになった.この結果,従来の社会心理学的モデルを踏まえつつも脳科学の知見を応用して情動的プロセスと合理的プロセスとに分けることで,この態度形成過程を説明できるという,当初の研究計画では予期しなかった新たな仮説を形成するに至った. (3)政治過程や態度形成の分析枠組みについては,両国における事例分析に適用し,有用性の実証を試みた.特に施設受け入れに関わる住民の態度形成過程分析枠組み(仮説)は,まず日本・東洋町における事例データと,フランス・ビュールや韓国・慶州などでの立地成功例の情報とを用いて検証した.その結果,住民の態度形成は感情的判断と理性的判断の2段階で分析できるという仮説に到達した.このことは立地政策の有効性を判断する有益な情報たり得る.
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