研究概要 |
本研究は、ランタノイドとマイナーアクチノイドと呼ばれるAm、Cmなどトレーサーとして扱える元素の溶媒抽出の系統的実験と、100番を超える重元素領域の化学実験からなる。後者は、単一原子を対象とする化学となり、重イオン加速器からのビームをアクチノイドターゲットに照射することで対象原子を製造しつつ、ガスジェット搬送システムにより化学装置に運び、オンラインで迅速化学実験を多数回繰り返すことにより実現する。 今年度は、重アクチノイドの溶媒抽出実験を主に行った。これまでのAm、Cm、Cfに加え、Bk、Es、Fm、MdのHDEHPによる抽出データを得た。Es、Bk、Mdは原研・タンデム加速器施設において、それぞれ^<248>Cm(^<11>B,X)^<250>Bk、^<249>Cf(^<11>B,X)^<253>Es、^<248>Cm(^<11>B,4n)^<255>Mdの核反応で合成し、EsとBkは捕集した生成物中から分離した後、バッチ法で抽出、^<255>Mdは半減期が27分のため捕集しつつ抽出を数十回繰り返すことでデータを得た。Fmは阪大RCNPにて、^<238>U(^<16>O,4n)^<250>Fm(半減期30分)の核反応で、同様に捕集しつつ抽出を数十回繰り返しデータを得た。このようなアクチノイドのMdまで至る系統的な実験が行われたのは世界でも初めてである。 得られた結果をランタノイド(当研究室で実験済み)と比較した結果、アクチノイドにおいてランタノイドより大きなテトラド効果が見いだされた。このような抽出挙動の系統的な違いからf電子の結合性について考察を進めている。
|