研究課題/領域番号 |
21360470
|
研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
田口 光正 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (60343943)
|
研究分担者 |
勝村 庸介 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70111466)
渡辺 立子 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究主幹 (10360439)
須郷 由美 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (90354836)
倉島 俊 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 放射線高度利用施設部, 研究副主幹 (50370391)
|
キーワード | 重イオン / 水中化学反応 / 初期活性種 / 時間分解分光測定 / OHラジカル / 過渡吸収 / モンテカルロシミュレーション / トラック構造 |
研究概要 |
本研究では、量子ビームの高度医学・工学利用に資するために、高エネルギー重イオン照射によって水溶液中に高密度に生成する活性種の挙動を理解することを目的としている。サイクロトロン加速器からの重イオンのシングルパルス化を迅速に行うために、等時性磁場計測手法を高度化し、チョッパー装置の制御信号発生機器を更新するとともに、プラスティックシンチレータとフォトマルチプライヤー、オシロスコープを用いたビームバンチのリアルタイム計測技術の開発を行った。その結果、これまではシングルパルス化が実施されていなかった10MeVプロトンについて、10分程度での迅速なチョッパー調整に成功した。また、核子あたり10-20MeV程度のH,He,C,Neイオンについて、エネルギー、つまりLETを変化させたパルス照射を行った。試料には、水分子の分解によって生じる、水酸化(OH)ラジカルのプローブであるNaBr(100mM)を用いて、Br^-_2の生成・消滅を分光学的に時間分解観測したところ、照射イオン種の原子番号の増加、およびLETの増加に伴いBr^-_2の生成収率が減少した。Br^-_2は、OHラジカルとBr^-_2の反応中間体であり、核種及びLETの増加に伴い、イオン飛跡周りの活性種初期密度が増加し、それに伴う活性種同士の再結合反応の増加が原因と考えられ、この反応解析のための化学反応データセットを構築している。さらに、モンテカルロ法を用いたトラック構造シミュレーションにより、重粒子線および、ごく低線量のγ線による細胞集団・細胞核内での空間的な微視的線量分布およびDNA損傷分布の解析を行い、その不均一性を定量的に明らかにした。 以上、高エネルギー重イオン照射によって水溶液試料中た誘起される活性種反応を実験・理論的に解明するための照射計測技術の高度化や、物理化学理論に基づいた反応の定量解析に成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者と分担者の相互関係及び研究計画を明確にし、各人が適切かつ意欲的に研究開発を進めた。メール等により緊密に連絡を取ることで、情報の共有化をはかり、研究体制を強化した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究課題は平成24年度で終了であるが、本課題で得られた高速荷電粒子誘起現象の時間及び空間分解解析に関する知見を次世代高度先進医療やナノ林料創製などに展開する予定である。
|